終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
「そろそろ、着くかな?」
「着く?秘書の方ですか?」

おやつにつられたサモエドに揉みくちゃにされていると、社長がニヤニヤしながら出入口を見ていた。
すると、もの凄い剣幕で、スーツ姿の男性が入店してきた。
 
「クソ親父っ!!」
「静かにしろ、志穂ちゃんやサモエドがびっくりするだろ」

珍しく苛立った声の綾人。
近寄ってきたサモエドを片手で撫でながら、あたしたちの前まで歩いてくる。
 
「勝手に志穂を連れ出すんじゃねぇよ!つか、何だよこの写真はっ」

綾人が見せたスマホのメッセージアプリには、【志穂ちゃんと♡】という文字と、先ほど撮った社長とサモエドとあたしの写真。
 
「いやぁ志穂ちゃん、顔もタイプだし愛嬌あるし、そりゃ綾人落ちるわ」
「名前呼びすんな、クソ親父。しかも何だよタイプって」
「俺の娘になるんだろ? 可愛がるだろ」
「さわんな、見るな、消えろ」
「ちょっと二人とも……」 

宥めつつも、いつもより幼く見える綾人が可愛い。
 
(お父さんの前だと、綾人も息子なんだね……ふふっ) 
二人の子供じみた言い争いも、ただの可愛い親子のじゃれた姿にしか見えなかった。   
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