終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
もうすぐ秘書が迎えに来るということで、店の外で待つことにした。
夏の終わりが近づいてるとはいえ、木陰にいてもまだ蒸し暑い。
(改めてみると、綾人も社長も……顔面のビジュが良すぎて眩しい……)
流れる汗を拭う仕草も、さすがは親子。
良く似ていて、様になっている。
暫くして、黒のセダンが到着し、秘書の方がお辞儀をする。
乗り込む前に社長が、真面目な顔で綾人の肩を軽く叩いた。
「綾人」
「お前、母さんとは違う女を選んだな」
「……でも、お前にはその子の方が合ってる」
「知ってる」
「いい女を見つけたな」
「……当たり前だ」
「ちゃんと幸せにしろ。俺みたいにはなるなよ」
「言われなくても」
そっけない綾人の態度に、社長は苦笑いした。
今度はあたしの方に向き直る。
「志穂ちゃん、また今度、お茶しようね」
「行かねぇ」
「お前には聞いてない」
あたしの返事より先に綾人が答え、「早く行け」と手で追い払った。
社長の乗った車が見えなくなると、珍しく綾人が大きなため息をついた。
「……疲れた」
「お疲れさま」
「何話した?」
チラっと横目で見てくる。
何だか可愛くて、思わず口に指をあてる。
「ナイショ」
「は?」
「社長……」
少し考えてから、あたしはいたずらっぽく笑う。
「お義父さんとの秘密」
「……あのクソ親父」
「拗ねてる?」
「拗ねてねぇ」
そう言いつつ、綾人がゆっくり歩き始める。
眉間にシワを寄せたまま。
あたしも、隣を歩いていく。
「じゃあ何?」
「……俺より先に連絡先交換した」
「それ怒るところ?」
「怒る」
「なんで?」
「俺より返信早そう」
(そんなこと、気にしてるんだっ)
なんていうか、本当にお父さんの前だと統括責任者も形無しだ。
「ふふっ……綾人もお父さんには敵わないね」
「なんだそれ」
心底イヤな顔の綾人が、またもやため息をつく。
そして、お昼ごはんを食べ損ねたとぼやき始めた。
「腹減った」
「帰ったら何食べたい?今日はあたしが作るよ」
「お前」
「はい、却下」
あたしは笑いながら、綾人の腕にぎゅっと抱きつく。
「綾人」
「?」
「好き」
すると、綾人が「知ってる」と、手を繋ぎ直す。
「……帰ったらミルクティー淹れてやる」
「ふふっ、それご褒美?」
「違う」
「じゃあ何?」
「俺が飲ませたいだけ」
夕暮れに伸びる二つの影が、一つに重なる。
ミルクティーの甘さみたいに。
隣にいることが、もう当たり前になっていた。
夏の終わりが近づいてるとはいえ、木陰にいてもまだ蒸し暑い。
(改めてみると、綾人も社長も……顔面のビジュが良すぎて眩しい……)
流れる汗を拭う仕草も、さすがは親子。
良く似ていて、様になっている。
暫くして、黒のセダンが到着し、秘書の方がお辞儀をする。
乗り込む前に社長が、真面目な顔で綾人の肩を軽く叩いた。
「綾人」
「お前、母さんとは違う女を選んだな」
「……でも、お前にはその子の方が合ってる」
「知ってる」
「いい女を見つけたな」
「……当たり前だ」
「ちゃんと幸せにしろ。俺みたいにはなるなよ」
「言われなくても」
そっけない綾人の態度に、社長は苦笑いした。
今度はあたしの方に向き直る。
「志穂ちゃん、また今度、お茶しようね」
「行かねぇ」
「お前には聞いてない」
あたしの返事より先に綾人が答え、「早く行け」と手で追い払った。
社長の乗った車が見えなくなると、珍しく綾人が大きなため息をついた。
「……疲れた」
「お疲れさま」
「何話した?」
チラっと横目で見てくる。
何だか可愛くて、思わず口に指をあてる。
「ナイショ」
「は?」
「社長……」
少し考えてから、あたしはいたずらっぽく笑う。
「お義父さんとの秘密」
「……あのクソ親父」
「拗ねてる?」
「拗ねてねぇ」
そう言いつつ、綾人がゆっくり歩き始める。
眉間にシワを寄せたまま。
あたしも、隣を歩いていく。
「じゃあ何?」
「……俺より先に連絡先交換した」
「それ怒るところ?」
「怒る」
「なんで?」
「俺より返信早そう」
(そんなこと、気にしてるんだっ)
なんていうか、本当にお父さんの前だと統括責任者も形無しだ。
「ふふっ……綾人もお父さんには敵わないね」
「なんだそれ」
心底イヤな顔の綾人が、またもやため息をつく。
そして、お昼ごはんを食べ損ねたとぼやき始めた。
「腹減った」
「帰ったら何食べたい?今日はあたしが作るよ」
「お前」
「はい、却下」
あたしは笑いながら、綾人の腕にぎゅっと抱きつく。
「綾人」
「?」
「好き」
すると、綾人が「知ってる」と、手を繋ぎ直す。
「……帰ったらミルクティー淹れてやる」
「ふふっ、それご褒美?」
「違う」
「じゃあ何?」
「俺が飲ませたいだけ」
夕暮れに伸びる二つの影が、一つに重なる。
ミルクティーの甘さみたいに。
隣にいることが、もう当たり前になっていた。