終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
「志穂ちゃん、終電気をつけてね」
「ありがとう、マスター。でも大丈夫」
「今度から終電逃しても、あたしだけの王子が迎えにきてくれる——鑑賞用じゃなくて本当の……」

自分の言葉に思わずはにかむ。
でもマスターは茶化さずに、静かに言った。 
  
「そうだね。……奇跡の恋だね」

ここは、BARビーナスベルト。
夜明け前の淡いピンクの光ように、あたしたちを照らす。
 
終電を逃したあの日からはじまった、鑑賞用に隠した恋は——  
もう、隠す必要なんてない。

叶わぬ恋は、奇跡の恋へと変わっていった。
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