終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
そろそろ紅葉が賑わいだす、十一月のとある平日。
あたしは消えていくだけだった有給を使い、休日を満喫していた。
  
「まさか、ここに自費で泊まる日が来るとはな」
「はぁぁ……やっぱりハイシーズンは争奪戦だったもんねぇ……イベントと重ねたほうが良かったよね」
「違ぇよ」

そう! 
今日は楽しみにしていたワタセホテルに宿泊する日。
推しとこたつとおでんとBARを、体験するラグジュアリーで非日常の空間。

嬉しいことに企画は大成功で、完売日が続出しているそうだ。
 
(狙ってたクリスマスや年末年始……取れなかったもんなぁ……)

取れなかった瞬間、悲鳴に近い声で叫び綾人が驚いていた。
でも、平日は平日なりの楽しみ方がある。
いつもなら勤務中な時間も、今はこたつのぬくもりに包まれゆっくり過ごせる。
そして、夜景に負けない輝きを放ついち様を、余すことなく撮っていく。 

パシャパシャ。
パシャパシャパシャ。  

「おい、志穂」 
「なに?」

パシャパシャパシャパシャ。
パシャ。
  
「どんだけ撮んだよ」
「大丈夫、モバイルバッテリー持ってきてるから」
「聞いてねぇよ」
「あ!綾人!もうちょい左に……いち様と肩並べてっ……そうっ!!」

パシャ。
パシャパシャパシャ。    

「だから何で俺も撮るんだよ」
「記念だから!」
「意味分かんねぇ」
「撮れたぁぁぁ!」
 
あたしは、満足気に撮れた写真を見る。
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