終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
すると机におでんのお鍋と熱燗が運ばれてきた。
お出汁の良い匂いと熱々の湯気。  

「よしっ!次は熱燗といち様っ!」  
 
綾人は大きくため息をつく。
 
「俺より、そのアクスタのほうが扱い良くね?」
「そんなことないよ?」
「今、『ないよ?』って考えたろ」
「……ちょっとだけ」
「おい」
「いち様は推し」
「でも、一番隣にいてほしいのは綾人」
 
くつくつと笑いながら、綾人があたしの手を握る。
 
「知ってる。冷めるから早く撮れよ」
「はぁい」
「で、食い終わったら、風呂入るぞ」
「あ!温泉!」

ワタセホテルの高層階にある展望温泉大浴場。
その湯上がり処に、この企画としてフォトスポット、コーヒー牛乳やアイスキャンディーを用意しているのだ。

「やばい、いろいろ楽しみすぎるっ」
「部屋風呂だしな」
「え?」

味染み染み大根を頬張りながら、首を傾げる。
綾人も「うま」と玉子を口に運ぶ。

「いやいや、大浴場……だよね?」  
「写真撮ったら、戻るぞ」
「なんでよっ!」
「逆にどうやって大浴場でイチャつくんだよ」
「綾人っ!!」       
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