終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
♪♪♪~

「♪♪♪~!」
「ぶはっ……ちょっ……お前っ」
「ん?なに?」

珍しく爆笑めいた声を出す綾人。
あたしはペンライトを持ったまま振り返る。

「初めて見たけど……ふははっ……お前のダンスすげぇんだけどっ」  
「え?」  
「体幹どうしたっ」
「そんなにっ?」
     
たしかに……体育の授業であったダンスも、あたしが踊るとウケてたけど。
 
「爆笑するほど酷いっ?!」
「いやっ……酷いとかじゃねぇけど……独特だな」
「えぇぇ~??」

いち様と同じように踊って見せる。
すると、じっと画面を見てた綾人が、手を振り始めた。
そのまま、足も動かし、気付けば同じフリを踊っている。

「え……えっ……ええええ?!」

画面に映るいち様に負けないくらい、最後にキメポーズする綾人。

「うそだ……このイケメンっ……ほんとにっ」
「なに?惚れなおしたか」

綾人は得意げに口角を上げる。
  
「ぐぬぅぅぅっっ!!負けないんだからっ」 
  
綾人は肩をすくめる。
余裕綽々な顔で、DVD のパッケージにあるセットリストと照らし合わせていた。 
 
「ほら、次だぞ」
「え?」
「サビ」
「えええっ!?覚えたの?!」
「一回見りゃだいたい入る」
「なんなのこの人ぉぉぉ!!」

綾人の宣言通り、本当に寸分の狂いもない踊りだった。
初見とは思えない完成度に、あたしの負けず嫌いへ火がついた。

「あたしのほうが、愛が溢れてるんだからっ!」
「俺に嫉妬?」
「違うわよっ、あたしの推し愛をなめるなぁ!」

こうして、謎のダンスバトルも勃発した。 
まぁ、結果はいうまでもなく。
技術面は悔しいけど綾人の方が上手だった。
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