終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
荷造りした段ボールを、車を回してきてくれた綾人が、手際よく運び出していく。
「あと何箱だ?」
「えっと……あっ!それは丁寧に持って!限定品だから!」
あたしが指差したのは、ワレモノ注意、天地無用、水濡れ注意、下積み厳禁と、ありとあらゆる注意喚起が貼られた段ボール。
「これか?」
「違う!そっちは量産!」
「知らねぇよ」
そう言いながらも、丁寧に持ち出してくれる。
まるであたしの想いもちゃんとわかってくれてるみたいで。
「それが最後」
「思ったより少ねぇな」
「祭壇は今回は置いていくわ」
「全部積めるぞ」
「積まないっ!!」
「ま、今度運び出してやるよ」
最後の段ボールを抱えた綾人が、さらりと言うから困る。
だって同居は期間限定だから――
ちくっ。
(……オタクなあたしでも笑わないとか……勘違いしそうになる)
(じゃなくて!今は作業に集中しないとっ)
家に残されたいち様にうしろ髪を引かれつつ、車に乗り込む。
ドアを閉めた瞬間、ふわりと木の香りがした。
強い香水じゃない。
洗い立てのシャツと、ブラックコーヒーと、それから少しだけスパイス。
いつも綾人の近くで感じる匂いだ。
(嫌じゃないから……困る)
「え、なんで助手席の飲み物ホルダーにミルクティー入ってるの?」
「お前用」
「……え?」
「乗せる時、毎回買うの面倒だから」
「ほんと調子狂う……でも、ありがとっ」
エンジン音とともに、静かに走り出す。
綾人の家があんな感じだったから、想像していた車と少し違う。
国産のSUVで、中も彼らしいシンプルな内装だ。
「思ったより普通の車なのね」
「なんだと思ってた?」
「王子だから白馬」
「乗せてやろうか」
「結構です。……外車かなって」
「外車がよかったのか?」
「ううん、こっちのが綾人らしい」
「あっそ」と可愛げのない返事だけど、その横顔はやっぱり優しくて、こっちまで調子狂う。
あたしは誤魔化すように、ミルクティーを一口飲んだ。
「それより、荷解きしたら、晩めしついでにビーナスベルト行かないか」
「いいわね、綾人の奢りね」
「何でだよ」
「言い出しっぺだから」
「一杯だけな」
こんな軽口をずっと言い合えるこの関係に、少しだけ居心地良いと思い始めていた。
「あと何箱だ?」
「えっと……あっ!それは丁寧に持って!限定品だから!」
あたしが指差したのは、ワレモノ注意、天地無用、水濡れ注意、下積み厳禁と、ありとあらゆる注意喚起が貼られた段ボール。
「これか?」
「違う!そっちは量産!」
「知らねぇよ」
そう言いながらも、丁寧に持ち出してくれる。
まるであたしの想いもちゃんとわかってくれてるみたいで。
「それが最後」
「思ったより少ねぇな」
「祭壇は今回は置いていくわ」
「全部積めるぞ」
「積まないっ!!」
「ま、今度運び出してやるよ」
最後の段ボールを抱えた綾人が、さらりと言うから困る。
だって同居は期間限定だから――
ちくっ。
(……オタクなあたしでも笑わないとか……勘違いしそうになる)
(じゃなくて!今は作業に集中しないとっ)
家に残されたいち様にうしろ髪を引かれつつ、車に乗り込む。
ドアを閉めた瞬間、ふわりと木の香りがした。
強い香水じゃない。
洗い立てのシャツと、ブラックコーヒーと、それから少しだけスパイス。
いつも綾人の近くで感じる匂いだ。
(嫌じゃないから……困る)
「え、なんで助手席の飲み物ホルダーにミルクティー入ってるの?」
「お前用」
「……え?」
「乗せる時、毎回買うの面倒だから」
「ほんと調子狂う……でも、ありがとっ」
エンジン音とともに、静かに走り出す。
綾人の家があんな感じだったから、想像していた車と少し違う。
国産のSUVで、中も彼らしいシンプルな内装だ。
「思ったより普通の車なのね」
「なんだと思ってた?」
「王子だから白馬」
「乗せてやろうか」
「結構です。……外車かなって」
「外車がよかったのか?」
「ううん、こっちのが綾人らしい」
「あっそ」と可愛げのない返事だけど、その横顔はやっぱり優しくて、こっちまで調子狂う。
あたしは誤魔化すように、ミルクティーを一口飲んだ。
「それより、荷解きしたら、晩めしついでにビーナスベルト行かないか」
「いいわね、綾人の奢りね」
「何でだよ」
「言い出しっぺだから」
「一杯だけな」
こんな軽口をずっと言い合えるこの関係に、少しだけ居心地良いと思い始めていた。