終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
そう言った男性は、綾人と同じくらい端正な顔に、品の良いスーツに身を包んでいる。     

「神代さまもこんばんは。あちらでお父様が探していらっしゃいましたよ」

にこりとした顔だが、ものすごい圧を感じたのか、おとなしく彼女はその場を去った。
それを見送った男性が、小さくため息をつく。 

「めっちゃ嫌われてるやん、俺」
「璋が前に正論で叩き潰したからだろ」

綾人が楽しそうに、璋と呼んだ人の肩を叩く。

「志穂、こいつ、四ノ宮ホールディングスのボンボン」
「初めまして。四ノ宮璋(しのみやあきら)と申します。綾人とは腐れ縁ですね」

あたしはこの二人の顔の良さに、しばらく呆けてしまい、挨拶が遅れてしまった。

(……って、え?あの超有名な四ノ宮ホールディングスの御曹司っ?……なんで綾人と知り合いなの) 

「あっちに九条さんがおったで。気ぃつけろよ」

四ノ宮さんが奥で談笑しているグループに視線を向ける。
綾人も一瞬だけ見やる。
    
「藤原さん、綾人のことよろしくお願いします。こう見えてこいつ、一途なんで」

四ノ宮さんは軽く笑って、他の人のほうに行ってしまった。

(は?……一途?綾人が?) 

情報量が多すぎて、すでに頭がパンクしそうだ。

「……ミルクティー飲みたい」
「帰ったら淹れてやるよ」
「あんた……ほんとは何者なの?」      

問いかけた瞬間、会場内の空気が静まった。
さっきまでのざわめきとは違う、 どこか張り詰めたような感覚。
 
「……来たな」
 
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