終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
家に着いたら、時計の針はすっかり夜を回っていた。
着替えるより先に、綾人が冷蔵庫から冷えたミルクティーを渡してくれた。
それを一気に飲み干せるほど、あたしの心も体も渇ききっている。

「はぁぁぁ……沁みわたるぅぅ……」  

ソファでゆっくり飲んでやっとひと心地ついた。
——つく、はずだった。
 
「ていうか何なのよ全部!!」
「急だな」
「急じゃない!!」

キッチンにいる綾人を睨む。 
同じく冷蔵庫から取り出したコーヒーを飲んでいる。
少しネクタイを緩めた姿も、様になってるから、本当にイケメンは得だと思う。

(あ……イケメンといえば……)  
 
「四ノ宮さんもイケメンだった!」

あたしは今日初めて会った四ノ宮さんを、しっかり思い出す。
綾人とは違うタイプのイケメンだ。
   
「そこかよ」 
「だって、あんな顔が二人並んでるとか反則でしょ!しかも普通に会話してたし!」
「は?」 
「なんなのあの世界!」

なぜあの時、スマホのカメラに収めなかったのか、少しだけ後悔している。 
 
「璋の顔褒めるな」
「そこじゃない!」
「いや、そこだろ。でもあいつ婚約者いるぞ」
「なんて羨ましい!!」
「は?お前だっているだろうが」
「それとこれとは別よ!」
 
綾人の眉間がぴくりと動いた。
 
(あ、なんか今、地雷踏んだ?)

でも正直、どこが地雷なのか分からない。 
 
「ていうか、なんで言わなかったのよ」
「何を」
「全部よ!!」 

あたしは綾人の前に仁王立ちになる。
疑問や言いたかったことを、矢継ぎ早にぶつけていく。  

「紹介って言ったわよね!?」
「言った」
「親に挨拶って言ったわよね!?」
「言った」

いつの間にか綾人はソファに座り、胡座をかいてる。
もうそんなことより、あたしは畳み掛けるように綾人に詰めよった。
  
「後継者って何!」
「ホテルって何!」
「パーティーって何!」
「数百人の前で婚約者発表って何!」 
「聞かれなかったし」
「綾人ぉぉぉ!!」
「落ち着け」
「落ち着けるかぁぁぁ!!」
 
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