終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
***    
あたしの日曜日の朝は、起きるのが遅い。
  
「んぅ……」
 
夢と現実の境目を漂いながら、あたしは無意識に温もりへ擦り寄った。
ふわりと鼻先をくすぐる、落ち着く香り。
 
(……ミルクティー……?)
 
違う。
もっと好きな匂い。
 
抱き枕みたいに腕を回して、胸元へ頬を寄せる。
離さないよう、指先に力が入る。
すり、と無意識に頬を擦りつけると、心地良い体温が返ってきた。
 
「んー……」
 
あったかくて、気持ちいい。
もう少しだけ、このままで——。
すると、小さな笑い声が降ってきた。
 
「……くすぐってぇ」
「……ふぇ?……」 

(……この抱き枕、笑う機能なんかあったっけ?)
 
抱き心地を確かめるように、もう一度ぎゅっとする。
そして、ゆっくり目を開けると、一面に肌色。
 
「朝っぱらから大胆だな」 
「……………………っ?!あやと?!」
「もういいのか?」
「~っ!おきるっ」
「ん」

なぜか両手を軽く広げる綾人。
  
「え?」
「覚えてねぇのか?お前が言ったんだろ『ぎゅうしてー』って」
「っ!?!?」
 
恥ずかしさのあまり、反射的に綾人を突き落とした。
――そんな最悪な、でもある意味最高な朝の始まりだった。 
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