終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
都会の喧騒から少し離れた住宅街。
定時で仕事を終わらせたあたしは、綾人に連れられて友人が院長を務める鍼灸院にいた。
          
「以上で、施術は終わりです。お身体はどうですか?」
「すごいっっ!めちゃくちゃ楽になりました!」 

起き上がって、肩や腕を回す。
びっくりするくらい、楽になったのがわかった。

「急にすみませんでした。でも本当に助かりましたっ」
「いえいえ。私のほうこそ、綾人の貴重な姿を見ることが出来たので良かったです」
「え?」
「初めてなんですよ、綾人がついてくるなんて」

服を整えカーテンを開けると、阪野(さかの)先生が朗らかな笑みで教えてくれた。
待合室に戻ると、気付いた綾人が雑誌から顔を上げる。      
 
「な、楽になっただろ」
「うん」
(いさむ)は、腕だけは良いからな」
「顔だけは良い綾人には言われたくないですねぇ」

(友達の前だと、こんな感じなのね……なんか可愛いかも)

次の予約日を相談しつつ、二人の楽しげな言い合いを眺めていた。
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