終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない

第14話 過去に置いてきた恋心

鳴り続けるスマホを、画面を見つめたまま取ることが出来ない。
切れたのも束の間、着信中の画面が表示される。

「すみません、ちょっと席外しますね」

あたしはそう言って、店先に出てボタンを押す。

「……もしもし」
「よっ、志穂。久しぶり」
「……うん」
「元気そうで安心した」
 
平松大輔(ひらまつだいすけ)——
 
一年ほど付き合っていた。
推し活を否定され、部屋のインテリアまで彼好みに変えていた。
「程よく自立した社会人の彼女」でいようとしていた頃。

(普通ってなに?……あたしらしくってなに?)

そんな疑問を押し込め、目を瞑っていれば、幸せなカップルだったと思う。
 
何となくこのまま、結婚するのかなとも思っていたある日。

『しっかりし過ぎて可愛げがない』
『推し活はやめろ』
『仕事が忙しくなった。別れよう』

一方的に理由を告げられて別れ、音信不通になった元彼だ。
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