終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない

第22話 サヨナラのかわりに

まだ日が昇る前の暗い寝室。
隣で眠る綾人の寝顔を見つめる。
 
(睫毛長い……肌も白い……整った鼻筋……)
(唇の形もきれい……)

一つ一つ、目に焼き付けるように、パーツを眺めた。    
もうこんな距離で、寝顔を見ることは出来ないだろうから。
ほんの少し未練がましく、顔を近づける。
 
(……幼く見えるしかわいい)

ずっと見ていたい。
けれど、起こさないよう、そっとふとんから抜け出す。
歯磨きしていると、後ろからぺちんと頭を叩かれた。

「早すぎだろ」
「綾人……なんで?」
「朝イチで会議なんだよ」

あくびをかみ殺しながら、歯ブラシを取った。
まだ少し眠たそうな目をしている。 

「朝飯用意するから待ってろ」
「手伝うわよ」
「いいから、準備しとけ。ミルクティー先に淹れてやる」

くしゃっと今度は髪を撫でられた。
 
「あたし……今日は帰り遅くなる」
「ん。あんま溜め込むなよ」
「うん、ありがと」   

(そんな優しさ……見せないで)

あたしには、そんな資格なんてないのに。
どこまでも、綾人の優しさが苦しくて、決心が鈍りそうだった。
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