終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない

第26話 アンクレットが似合う朝

柔らかくて、あたたかくて。
ふわふわとした夢心地で、目を覚ます。

「おはよ」
「……ふぁ……あや……と……?」
「なに?」
「ふふっ……」

(夢なのかな……?)
(それなら、存分に甘えてもいいよね)   

ぎゅっ。
あまり力が入らないけれど、綾人の体を抱きしめる。
心地好い肌の感触に……え?肌?
すると、目覚めさせるように、力強く抱きしめ返される。
 
「おはよ」
「……っ!」
 
昨夜の出来事が一気に蘇る。
フリじゃなくて、ちゃんと想いを伝え合った。
それなのに、目の前にいる綾人が現実だなんて、まだ信じられない。
  
「どした?」
「……夢……かもっ」
「起きろ」
 
鼻先がちょんとふれあう。
その距離が、現実だと教えてくれた。

「……近いっ」  
「ふぅん」   

さらに抱きしめられて、隙間がなくなる。 

「だからっ……近いってばっ」    
(恥ずかしくて、可愛げない言い方……)
(でも……嬉しい……)

気持ちを隠すように、腕の中でそっぽ向く。
綾人はくつくつと笑いながら、あたしの頬を摘まんでみせた。
 
「もうっ!」

厚い胸板をとんとんと叩いてみせるも、あまり効果はない。
それどころか、ニヤニヤした視線が降ってきた。
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