終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
「いい加減にっ……あっ!!」

左手首に着けてたはずのものが、なくなっていた。
かわりに赤い跡がいくつか咲いている。
 
(うそっ!……どこかで落とした?……って何この跡っ)

焦りながら記憶を探っていると、綾人が笑う。

「心配すんな、足見てみろ」
「え?」

ふとんの中からのぞいてみると、確かに左足首にある。
 
「本来の場所に戻した」
「良かった……」 

すると、綾人が大事なことをさらっと言う。
   
「あれ、正式な婚約者に渡すもんだからな。渡瀬のしきたりみたいなもんだ」
「聞いてないっ」
「言ってねぇし」
「なんでっ!?」
「逃げられたら困るだろ」 
「逃げないわよっ」
「当たり前だろ、逃がさねぇよ」                

そう言いながら、腕をほどいて起き上がった。 
綾人はあたしの左足首を掴むと、軽々と持ち上げた。
 
「ひゃぁっ……ちょっと待ってっ」
「待たねぇ。……ほんと可愛すぎて困る」
 
アンクレットをなぞるように、熱を孕んだ舌先が這っていく。 
抗議する前に、その声はふれあった唇にとけていく。
  
(うそっ!それ全然困った顔じゃないっ) 

あたしは心の中で思いながら、彼が与える熱に飲み込まれていった。
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