春は眩しくて、届かない


放課後。


教室の明かりが消えていく中、ふたりは校舎の外へ出る。


夕陽はもう傾いていて、風が少し冷たかった。


人気の少ない校舎裏。
部活の声も遠くなっていく。



「で、話って?」



柏木くんが壁に寄りかかりながら言う。


一歩前に出る。



「私、柏木くんのことが好き」



声は、思っていたよりもまっすぐ出た。


言った瞬間、胸の奥がきゅっと縮む。


柏木くんは一瞬だけ目を見開いて、それからゆっくり視線を落とした。


少しの沈黙。


そのあと、静かに口を開く。



「……ごめん」



その一言で、全部が分かってしまう。



「鈴野の気持ちには、応えられない」



風が一度、校舎裏を抜けていく。


小さく息を吸った。



「……そっか」



声は震えなかった。


ちゃんと聞けた自分だけが、少しだけ遠く感じる。


< 107 / 264 >

この作品をシェア

pagetop