春は眩しくて、届かない
柏木くんは続けない。
でも、陽奈は気づいてしまう。
その沈黙の奥に、もう一つの理由があることを。
「……でも」
彼が少しだけ言葉を選ぶみたいに続ける。
「鈴野なら、なんとなく分かってると思うけど」
陽奈が顔を上げる。
柏木くんは視線を逸らしたまま、小さく息を吐いた。
「水瀬のことは、前から気になってる」
その瞬間、胸の奥が静かに落ちる。
ああ、やっぱり。
知ってたはずなのに、言葉になるとこんなに重い。
陽奈は一度だけ目を伏せて、それから無理やり笑った。
「……うん」
「知ってたよ」
「柏木くん、りのんのこと気にしてるの」
声にすると、少しだけ軽くなる気がした。
でも実際は、軽くなんてなっていない。
「だから」
わたしは一歩だけ下がる。
「応援するね」
その言葉は、ちゃんと笑って言えた。
けど、胸の奥はちゃんと痛かった。
「柏木くんのこと」
それが精一杯だった。
ゆっくり背を向ける。
歩き出した瞬間、初めて気づく。