春は眩しくて、届かない
柏木くんのことを考えると、まだ痛い。
きっと明日会ったら苦しくなる。 普通になんて、まだ無理だ。
でも。
それ以上に今、 胸の中に大きく残っているものがある。
りのんの顔。
泣きそうに笑いながら、 「隣いる」って言った声。
あの瞬間、 陽奈は初めて気づいてしまった。
自分が本当に怖かったのは、 失恋じゃない。
りのんに嫌われることだった。
「……重症だ、私」
ぽつりと呟いて、枕に顔を埋める。
親友なのに。 大好きって言い合ってきたのに。
今さら、 その言葉の重さが変わってしまった気がする。
りのんに「ヒーロー」って言われた時。
苦しくて、 嬉しくて、 泣きたくて。
胸が、変になりそうだった。
陽奈はぎゅっと目を閉じる。
秋の夜は静かだった。
でも心臓だけが、 まだずっと、うるさかった。
部屋の電気を消しても、なかなか眠れなかった。