春は眩しくて、届かない
インターホンを押す。
数秒後、 ぱたぱたと軽い足音が聞こえてきた。
ドアが開く。
「おはよ!」
いつもの笑顔。
少し大きめの声。 明るいトーン。 くしゃっと細くなる目。
昨日泣いていた陽奈とは、 まるで別人みたいだった。
でも、わたしには分かる。
陽奈なりに、 ちゃんと笑おうとしてる。
だから、 「無理しないでね」って言うのは違う気がした。
その言葉を向けた瞬間、 陽奈はもっと“頑張って笑わなきゃ”って思ってしまう気がしたから。
りのんはただ、小さく笑う。
「おはよ、ひな」
それだけ。
でも陽奈は、 その短い声に少しだけ安心したみたいに笑った。