春は眩しくて、届かない
オーブンの音が鳴る。
「できた!」
陽奈が立ち上がる。
焼き上がったガトーショコラは、 表面が少しだけ割れていて、 甘い匂いが部屋いっぱいに広がった。
「え、天才」
「ほんと?」
「柏木くんこれ食べたら絶対顔赤くなる」
「なんで!?」
「だってこんなにかわいいりのんの手作りだよ!?」
笑いながら、 少しだけ胸に手を当てた。
明日、 ちゃんと渡せるかな。
まだ“好き”とは言えない。
でも。
“ありがとう”なら、 きっと言える気がした。