春は眩しくて、届かない


バレンタイン当日の朝。


りのんは家を出る前から、ずっと落ち着かなかった。


机の上の小さな紙袋。
リボンを結び直して、
またほどいて、
結局最初の形に戻す。



“いつもありがとう”



それだけ言えばいい。
昨日、陽奈にもそう言われた。


なのに、
その一言が思ったより難しい。


学校へ向かう道。
吐く息は白くて、
雪が少しだけ端に残っている。


待ち合わせ場所には、もう陽奈がいた。



「おはよー!」



いつもの明るい声。
でも次の瞬間、
陽奈の視線がりのんの紙袋へ吸い寄せられる。


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