春は眩しくて、届かない
「……ひな、ごめん」
『……』
「好きになっちゃった」
その瞬間。
電話の向こうで、 陽奈がふっと息を吐く音がした。
それから。
『……知ってたよ』
すごく優しい声だった。
『りのん、 柏木くんの話してる時だけさ』
『ちょっと世界やわらかくなるもん』
「……なにそれ」
恥ずかしくて、 りのんはまた布団へ顔を埋める。
陽奈は小さく笑った。
『でもさ』
「ん?」
『謝らなくていいよ』
静かな声。
『恋するのって、 悪いことじゃないじゃん』
胸が、 じわっと熱くなる。
去年。
校舎裏で泣いた陽奈。
“りのんの恋、応援したい”
そう言ってくれた顔。
全部、 思い出す。
だからこそ、 わたしはずっと少し怖かった。