春は眩しくて、届かない
——きっと、陽奈は気づかない。
今日、 自分が廊下で立ち止まっていたことも。
柏木くんと並んで歩く陽奈を、 少し遠くから見ていたことも。
“先生に呼ばれてた”なんて、 全部嘘だったことも。
画面を見つめたまま、 りのんは小さく笑った。
——我ながら、演技が上手い。
いつも通りを装うことも、 平気なふりをすることも。
きっと陽奈は、 最後まで気づかない。
でも。
自分の心にだけは、 どうしても嘘をつけなかった。
胸の奥が、 静かに痛かった。