春は眩しくて、届かない

味のしない卵焼き




次の日の昼休みは、やけに静かに始まった気がした。



「りのんー!今日もここでいい?」



声がして顔を上げると、陽奈がこちらを見ていた。



いつもの笑顔。
少し大きめに手を振る仕草も、全部いつも通り。



「うん、いいよ」



そう返すと、陽奈は嬉しそうに席に来て、いつもの場所に座った。



「ねえ、ひな」



りのんは少しだけ声のトーンを落とす。



「ん?」



「昨日さ」



その一言で、陽奈の動きがほんの少し止まる。



りのんは視線をお弁当に落としながら続けた。



「柏木くんと……一緒にいた?」



一瞬の沈黙。



陽奈が「え?」と小さく笑う。



「いたっていうか、たまたまね!ノート返してもらってて」



その言い方が、少しだけ早口だった。



「……りのん見てたの?」



問いかけると、陽奈は一瞬だけ目をぱちっと瞬いたあと、すぐに笑った。



「うん、まあ……教室の前通った時に、少しね!」



軽い声。



「そっか」



それ以上は聞かず、小さく笑った。



「ごめんね。変なこと聞いて」



「え?」



「なんでもない」



箸を持つ手を動かしながら、りのんは味のしない卵焼きをひと口食べる。



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