離縁したはずですが、元夫が再会後に溺愛してきます
嫌ではない。私だってずっと忘れられずにいたのだから、求められて嬉しくないわけがない。

「その聞き方ずるい……」

「思ったことは全部伝えるし、遠慮はしないと決めているんだ。澪、君がもう一度手に入るなら俺はなんだってする」

肩を支えていた手が後頭部に回り、手櫛を通すように髪をうなじから掬った。背中にくすぐったい感覚が走る。

「――澪、好きだよ。柊のことは抜きにして、澪だけの気持ちを聞かせて」

そのままぐっと引き寄せられ、私は瞼を閉じた。
自分だけのことを考えるのならば、今すぐにでも樹さんの胸に飛び込みたい。
ちゅっと軽いリップ音が鳴る。啄むように何度か唇を重ねると、樹さんはもどかしそうに言った。

「もっとこちらに。柊が起きてしまいそうだ」

柊を抱っこしたままで、うまく身動きがとれないようだ。

「ふふ、だからお布団用意するって言ったのに」

なんとか体勢を整えようと、もぞもぞ動く樹さんがかわいらしく見える。

「だって、俺の腕の中でこんなに心地よさそうに寝るとか、可愛すぎてこのままで居たかったんだよ」

「じゃあ、キスは諦めればいいのに」

「駄目だ。澪のことも我慢したくない」

「欲張りなんだから……」

私は樹さんのほうに体を向け、自分から顔を寄せた。ゆっくりと距離を縮める中、樹さんは少し不敵さを含んだ満足げな笑みを浮かべる。

「そうだな。知ってただろ?」

(――もちろん)

優しいと思いきや実は強引なところは、昔のままだ。
――自分からのキスは、されるよりも何倍も緊張した。

< 18 / 25 >

この作品をシェア

pagetop