離縁したはずですが、元夫が再会後に溺愛してきます
***
しばらくすると澪の寝息が聞こえてきて、ほっと息をつく。
物音をたてないように移動をすると、社用のスマホで宮原に連絡を入れた。
【明日の夜までに静岡に戻る。ワーキングランチの時間を一時間早く切り上げて、その後の視察も繰り上げで】
飛行機を取り直し、車を手配すれば明日中にはつけるだろう。宮原には手間をかけるが緊急事態だ。
メッセージ送信後、五分もたたずにホテルの部屋のチャイムが鳴る。きっと宮原だ。物音で起こさないように澪と繋がるスマホをベッドの中に隠すと、きっと苛立っているであろう真面目な秘書を迎え入れた。
「社長、明日はただのランチじゃなくて、土地買収のための不動産会社を交えた大切な話し合いの場です」
予想通り、宮原はパソコンを抱えすぐに部屋に乗り込んできた。
「わかっているから、キャンセルじゃなくて効率化させたんだ。二時間半もいらないだろう」
「だからといって、予定を一時間も早く切り上げたら心象悪くなります」
「そうか? だらだら話しても結果は変わらない。意思決定の早い会社だと好印象だと思うけど。とにかく、これは決定事項だ。俺は明日、日付が変わる前に静岡につきたい」
正直、今すぐにでも澪の元に向かいたい気持ちをなんとか治めている状態だ。仕事も澪もどっちも諦めない、最善の策を練っている。
納得できなくとも、言われたことはこなす部下だが、いつもならすぐに聞こえる返事がこないので、視線を向ける。
「不明点は?」
「理解が及ばず、どのような理由でそのご判断に至られたのか、ぜひお聞きしたいですね」
宮原は何を言っているんだこの人は、と言わんばかりに皮肉たっぷりだ。
静かな怒りに内心肩をすくめる。
この仕事を始めるとき、お世話になった社長に、娘を使ってやって欲しいと言われ一緒に事業を始めたが、生真面目で上司にも意見をぶつけられるところを評価している。
仕事に関しては文句のつけようがないほどで、お願いした以上に仕上げてくるから、つい彼女ならなんとかしてくれるだろうと頼りがちだ。
静岡に行くと言った時点で、澪に会いに行くのはわかっているはずだ。
彼女とやり直すと決めてから、スケジュールで無理を通すことは多くなっているが、仕事に支障をきたしたことはない。毎回同行する宮原には、大変な思いをさせてしまっているとは思うが……。
「どうしても急がなくてはならない理由ができた。宮原への負担が重いなら、体制の変更も考えている。限界を迎える前に報告してくれ」
「そこに関しては問題ございません」
宮原は苛立ちを見せながらパソコンを開くとその場でスケジュールを調整していく。
「羽田行を早めるよりも、静岡行きの飛行機がちょうどいい時間があったのでそれに変更しました。こっちの方がぎりぎりのフライト時間ですが、視察も二カ所だけなので三十分ずつ繰り上げればなんとか間に合うでしょう」
「ありがとう。羽田の方が近いのでは?」
「距離はそう変わりません。都心よりも車が少ないので渋滞のリスクが減らせます」
その後も少し仕事の話をして、途中だったシャワーを浴び直しベッドに戻る。通話はまだ繋がっていて耳をすますと、ときおり布団の音と寝息に紛れたわずかな声が聞こえた。
「――澪、早く会いたい」
受話器に向かい囁く。
――どうか、俺が行くまで何事もないように。
しばらくすると澪の寝息が聞こえてきて、ほっと息をつく。
物音をたてないように移動をすると、社用のスマホで宮原に連絡を入れた。
【明日の夜までに静岡に戻る。ワーキングランチの時間を一時間早く切り上げて、その後の視察も繰り上げで】
飛行機を取り直し、車を手配すれば明日中にはつけるだろう。宮原には手間をかけるが緊急事態だ。
メッセージ送信後、五分もたたずにホテルの部屋のチャイムが鳴る。きっと宮原だ。物音で起こさないように澪と繋がるスマホをベッドの中に隠すと、きっと苛立っているであろう真面目な秘書を迎え入れた。
「社長、明日はただのランチじゃなくて、土地買収のための不動産会社を交えた大切な話し合いの場です」
予想通り、宮原はパソコンを抱えすぐに部屋に乗り込んできた。
「わかっているから、キャンセルじゃなくて効率化させたんだ。二時間半もいらないだろう」
「だからといって、予定を一時間も早く切り上げたら心象悪くなります」
「そうか? だらだら話しても結果は変わらない。意思決定の早い会社だと好印象だと思うけど。とにかく、これは決定事項だ。俺は明日、日付が変わる前に静岡につきたい」
正直、今すぐにでも澪の元に向かいたい気持ちをなんとか治めている状態だ。仕事も澪もどっちも諦めない、最善の策を練っている。
納得できなくとも、言われたことはこなす部下だが、いつもならすぐに聞こえる返事がこないので、視線を向ける。
「不明点は?」
「理解が及ばず、どのような理由でそのご判断に至られたのか、ぜひお聞きしたいですね」
宮原は何を言っているんだこの人は、と言わんばかりに皮肉たっぷりだ。
静かな怒りに内心肩をすくめる。
この仕事を始めるとき、お世話になった社長に、娘を使ってやって欲しいと言われ一緒に事業を始めたが、生真面目で上司にも意見をぶつけられるところを評価している。
仕事に関しては文句のつけようがないほどで、お願いした以上に仕上げてくるから、つい彼女ならなんとかしてくれるだろうと頼りがちだ。
静岡に行くと言った時点で、澪に会いに行くのはわかっているはずだ。
彼女とやり直すと決めてから、スケジュールで無理を通すことは多くなっているが、仕事に支障をきたしたことはない。毎回同行する宮原には、大変な思いをさせてしまっているとは思うが……。
「どうしても急がなくてはならない理由ができた。宮原への負担が重いなら、体制の変更も考えている。限界を迎える前に報告してくれ」
「そこに関しては問題ございません」
宮原は苛立ちを見せながらパソコンを開くとその場でスケジュールを調整していく。
「羽田行を早めるよりも、静岡行きの飛行機がちょうどいい時間があったのでそれに変更しました。こっちの方がぎりぎりのフライト時間ですが、視察も二カ所だけなので三十分ずつ繰り上げればなんとか間に合うでしょう」
「ありがとう。羽田の方が近いのでは?」
「距離はそう変わりません。都心よりも車が少ないので渋滞のリスクが減らせます」
その後も少し仕事の話をして、途中だったシャワーを浴び直しベッドに戻る。通話はまだ繋がっていて耳をすますと、ときおり布団の音と寝息に紛れたわずかな声が聞こえた。
「――澪、早く会いたい」
受話器に向かい囁く。
――どうか、俺が行くまで何事もないように。