離縁したはずですが、元夫が再会後に溺愛してきます
柊は目にいっぱい涙を浮かべ、戸惑いながらも走ってスマホを拾った。

「柊君、いい子だからこっちにおいで」

高野さんは私を羽交い絞めにしながら、柊を追いかけようとする。
柊は大泣きしながらスマホに向かって叫んだ。

「いっくん! いっくんたすけて!」

それから、周りの人にも助けを求める。

「だれかママをたすけて!」

「――澪!」

待ち望んだ声が聞こえたその時、どっと背中から押されるように前のめりになり転んだ。
同時に拘束の手が離れ、木場さんも床に倒れる。

「樹さん!」

走って来たのか、髪が乱れていた。

「お前っ……! またお前か邪魔をするな! お前のせいで高野さんはっ……」

木場さんは、ぶつかって来たのが樹さんだとわかるとすぐに憎悪を滲ませ飛び掛かった。
樹さんはそれを避けて冷静に腕を掴むと、膝を折らせ地面へうつぶせに押し倒した。

「警察を呼んでください!」

樹さんが声を張り上げると、近くにいた男性が数人で、一緒に木場さんを取り押さえてくれた。

「柊!」

樹さんが他の人に木場さんの拘束を任せて駆け寄ると、柊は彼の胸に飛び込んだ。

「いっくん! いっくん!」

「ああ、よく頑張った!」

樹さんは柊を抱きしめると、私にも手を伸ばす。

「澪! 無事でよかった……! 怪我はないか?」

「うん……大丈夫、ないよ。ありがとう……」

バクバクとした心臓が徐々に落ち着いてくると、じわりと涙が浮かんだ。
柊を一緒に抱きしめる。

「つけられていたのか……」

樹さんが木場さんを睨む。

「おもちゃに……たぶん、盗聴器が仕掛けられていたみたいで……ずっと」

あのおもちゃをもらったのは、一年ほど前だ。その間ずっと家の中の音も会話も盗聴されていたのかと思うと、寒気が止まらなくなった。

それを聞いた途端、樹さんは呻き全身に怒りを滲ませる。

「やめろ! 放せってば! くそっお前が現れなければよかったんだ!」

床でわめき、足をばたつかせ暴れている木場さんに、樹さんは私と柊をかばうように抱き寄せ、そのまま低く言い放った。

「二度と、俺の家族に近づくな」

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