離縁したはずですが、元夫が再会後に溺愛してきます
***
そして迎えた運動会当日。
「パパ!」
早朝に家に着いた樹さんに、柊は満面の笑みで飛びついた。樹さんはジャージ姿だ。とてもラフなのに爽やかで魅力的なのは変わらない。
「柊! おはよう」
樹さんは柊を抱き上げるとたかいたかいをする。
「晴れてよかったな」
「うん! オレね、てるてるぼーずつくったんだ!」
柊が泣いてしまったあと、保育園からは事情を話してみたらすんなりと了承をもらい、私はすぐに樹さんへ連絡をした。
樹さんは驚いていたが、必ず参加するからという頼もしい返事をくれ、なんとか仕事を調整してくれた。
「急なお願いでごめんね。二度とこんな無茶は言わないから」
柊に聞こえないように、耳打ちをする。
宮原さんに指摘されたばかりなのにこんなことになって、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。今後はこんなことが起こらないように、これからの保育園の行事は共有しておいた。
「気にしなくていい。もともと会食だけだったし子どもの行事だと正直に話をしたら、それなら仕方がないと調整し直してくれたよ」
「取引に支障は出ない……?」
「問題ない。取引先とは、これまで築き上げてきた信頼があるからな」
きっと樹さんだから融通をきかせてくれたのだろう。
「本当にありがとう……」
三人で行事に参加するのは初めてだ。実のところ、柊と同じくらいに私も楽しみにしていた。これまでの行事はふたりだけだった。他の家庭を見て私も樹さんと過ごせたらいいのにと、叶わない夢を望み、寂しい思いをしたことが少なからずあった。
「昨夜は遅くなかった?」
柊と参加してもらいたい競技がいくつかあるが、体力は大丈夫だろうか。寝不足で倒れられても困る。
「昨日もこちら方面だったんだ。だから意外と近くにいた。睡眠もしっかりとったから動けるぞ」
「静岡に? 最近多いんだね」
「ああ、澪の以前の家あたりに」
「あ、もしかしてリゾート開発の?」
「そうだ。まだ詳しくは話せないが、再計画の話が動きだせそうなんだ。兄の無謀な買収で近隣の方たちの期待を裏切ってしまったから、尻ぬぐいはしっかりやりたい」
「そうなんだ……楽しみにしているね」
深井ホテルの計画は頓挫して開発を練り直すとは聞いていたが、そこを樹さんの会社が担ってくれるなら安心できる。
温泉も景色も美しい立地だから、ぜひ色んな人に足を運んでもらい愛される町に生まれ変わってほしい。
張りきって作った大きな弁当と水筒を持って、今日は私の運転で保育園へ向かう。
受付を済ませ、園庭の隅にレジャーシートを引いていると、一度クラスでまとまっていた柊が戻って来た。
「パパ! もうすぐね、じゅんびたいそうするよ!」
いくらネットで話題になったとしても、一部の人しか見ないわけだし芸能人のように有名になったわけではない。
そんな認識でいたが、思ったより樹さんの顔は知られていたようで、始めは『似た人がいるな』くらいに思っていた人達も、その頃には〝話題のイケメン社長がいる〟とそわそわとした視線を送るようになっていた。
柊が樹さんを〝パパ〟と呼んだことで、その視線はもっと感じるようになった。
そしてのちのち、そこからさらに注目を浴びる事態になる。
「あれ? 柊~準備体操でつかうポンポンは?」
昨夜、園の鞄に入れたはずなのにない。
「あ、車の中で柊が見せてくれて、そのまま置いて来てしまった」
樹さんがあっと思い出す。
「じゃあ、私取ってくるから待ってて」
「俺が行こうか」
「ううん。柊といてほしい」
開会式と最初のダンスまでまだ二十分ある。
車の鍵を持つと、園の隣の敷地にある駐車場へ小走りで向かった。
そして迎えた運動会当日。
「パパ!」
早朝に家に着いた樹さんに、柊は満面の笑みで飛びついた。樹さんはジャージ姿だ。とてもラフなのに爽やかで魅力的なのは変わらない。
「柊! おはよう」
樹さんは柊を抱き上げるとたかいたかいをする。
「晴れてよかったな」
「うん! オレね、てるてるぼーずつくったんだ!」
柊が泣いてしまったあと、保育園からは事情を話してみたらすんなりと了承をもらい、私はすぐに樹さんへ連絡をした。
樹さんは驚いていたが、必ず参加するからという頼もしい返事をくれ、なんとか仕事を調整してくれた。
「急なお願いでごめんね。二度とこんな無茶は言わないから」
柊に聞こえないように、耳打ちをする。
宮原さんに指摘されたばかりなのにこんなことになって、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。今後はこんなことが起こらないように、これからの保育園の行事は共有しておいた。
「気にしなくていい。もともと会食だけだったし子どもの行事だと正直に話をしたら、それなら仕方がないと調整し直してくれたよ」
「取引に支障は出ない……?」
「問題ない。取引先とは、これまで築き上げてきた信頼があるからな」
きっと樹さんだから融通をきかせてくれたのだろう。
「本当にありがとう……」
三人で行事に参加するのは初めてだ。実のところ、柊と同じくらいに私も楽しみにしていた。これまでの行事はふたりだけだった。他の家庭を見て私も樹さんと過ごせたらいいのにと、叶わない夢を望み、寂しい思いをしたことが少なからずあった。
「昨夜は遅くなかった?」
柊と参加してもらいたい競技がいくつかあるが、体力は大丈夫だろうか。寝不足で倒れられても困る。
「昨日もこちら方面だったんだ。だから意外と近くにいた。睡眠もしっかりとったから動けるぞ」
「静岡に? 最近多いんだね」
「ああ、澪の以前の家あたりに」
「あ、もしかしてリゾート開発の?」
「そうだ。まだ詳しくは話せないが、再計画の話が動きだせそうなんだ。兄の無謀な買収で近隣の方たちの期待を裏切ってしまったから、尻ぬぐいはしっかりやりたい」
「そうなんだ……楽しみにしているね」
深井ホテルの計画は頓挫して開発を練り直すとは聞いていたが、そこを樹さんの会社が担ってくれるなら安心できる。
温泉も景色も美しい立地だから、ぜひ色んな人に足を運んでもらい愛される町に生まれ変わってほしい。
張りきって作った大きな弁当と水筒を持って、今日は私の運転で保育園へ向かう。
受付を済ませ、園庭の隅にレジャーシートを引いていると、一度クラスでまとまっていた柊が戻って来た。
「パパ! もうすぐね、じゅんびたいそうするよ!」
いくらネットで話題になったとしても、一部の人しか見ないわけだし芸能人のように有名になったわけではない。
そんな認識でいたが、思ったより樹さんの顔は知られていたようで、始めは『似た人がいるな』くらいに思っていた人達も、その頃には〝話題のイケメン社長がいる〟とそわそわとした視線を送るようになっていた。
柊が樹さんを〝パパ〟と呼んだことで、その視線はもっと感じるようになった。
そしてのちのち、そこからさらに注目を浴びる事態になる。
「あれ? 柊~準備体操でつかうポンポンは?」
昨夜、園の鞄に入れたはずなのにない。
「あ、車の中で柊が見せてくれて、そのまま置いて来てしまった」
樹さんがあっと思い出す。
「じゃあ、私取ってくるから待ってて」
「俺が行こうか」
「ううん。柊といてほしい」
開会式と最初のダンスまでまだ二十分ある。
車の鍵を持つと、園の隣の敷地にある駐車場へ小走りで向かった。