離縁したはずですが、元夫が再会後に溺愛してきます
荷物を軽く片付けると、ふたりで婚姻届の最後の仕上げをする。
また、〝式島澪〟になるんだ。以前は一年も経たずにその名前を捨てなくてはならなかった。

名前を書くだけで涙がでて、止まらなくなった。

「ママーどーしたの」

柊が心配したのか膝に乗ってきた。

「えへへ、ごめんね。嬉しくて」

子どもの前でこんな泣いていてはだめだと思うのに、感情をコントロールできずにぽろぽろと大粒の涙が零れる。 

「樹さんが柊のパパになって、三人で家族になれることがとっても嬉しいんだ」

泣き笑いになると、柊がティッシュを持ってきて拭ってくれた。

「もう二度と手放さない。同じ過ちは犯さないよ。今度こそ澪と柊を全身全霊かけて幸せにする」

「私も、もう離れたりしない」

揺るがない誓いを何度も確かめ合った。



その日、晴れて私は樹さんと夫婦になった。

窓口のお姉さんは慣れているのか淡々としていたが、私は書類に不備がないかと、情緒的なものとはまた違う緊張を感じていた。

一度目も同じ緊張をしていた覚えがある。

「二度目も同じくらい緊張するな」

樹さんがそう言って深呼吸していたので、思ったことは一緒だったらしい。
無事に終えて役所をでると、柊を真ん中にして手を繋いで歩く。

「おなまえかわった?」

柊が不思議そうにする。

「ああ、高野柊から、式島柊になったぞ」

「うん! へんしん、へんしん!」

柊はわかっているのかいないのか、名前が変わった事を喜んでぴょんぴょん跳ねていた。

「どんな気持ち?」

樹さんに聞かれて少し考えた。

「不思議な気持ち。それでいて、あったかいかも」

なんて表現すればいいのか。胸のあたりが愛おしさでいっぱいなのだ。

これまでどんなに笑っていても、どこかパズルのピースがかけたみたいに何かが足りなかった。

決して柊とふたりの生活が満足できていなかったわけじゃない。幸せな毎日を過ごしていた。けれど、どこかでずっと樹さんを求めていたんだと思う。

諦めるんだ、前を向くんだと言い聞かせて、母なのだから弱音を漏らさないようにと、寂しい気持ちを見ないふりをしてきた。

樹さんと過ごすようになってから、抑えていた感情が爆発したみたいに涙腺が緩くなっている。

優しい真綿に包まれているようにふわふわとした。 
きっと、それが樹さんが与えてくれているあたたかさなんだと思う。

「幸せってことか」

「うん。そう」

「俺もだ」

視線を合わせて互いに笑う。

二度目の誓いと出発が、一度目よりも強固で確かなものだと、どうしてかわかった。漠然とした願いではなくて、実際に私たちは強い絆で結ばれている。

目に見えないものが見えるような、本当に不思議な気持ちだった。
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