【新作】財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて
「え、道明寺、道明寺翼なの!?その翼くんって。」
目を見開いて固まっている陽菜。
「…そうだけど。陽菜、知っているの?」
「知っているっていうか、すっごい有名人よ!!私はまだ見たことないけど。だって、あの黒龍の総長だもの!!イケメンだし高身長だし、喧嘩も黒龍の中では一番強いっていう噂よ!
夏休みも何人ものJKに迫られていたんだけど、本命がいるからって全部冷たく断っていたらしいの!そのつれない感じもカッコ良いんだけどね〜。その本命って絶対六花よ。いいな〜翼くんと結婚できるなんて。」
「ま、まだ決まったわけじゃないから……!」
「とにかく、私は道明寺翼と六花の恋を応援するわ!これ、さっき友達に貸してたのが返って来たんだけど、六花もぜひ読んで!恋愛の超基本がわかるから!」
陽菜が私に渡してくれたのは、
『恋愛心理テスト&モテ・テク10選!トキメク小話付き』
という単語帳くらいのサイズの本。
「六花がこのモテ・テクを実践したら、道明寺翼も六花の気持ちに気づいてきっと告白してくれるわ。とにかく、まずはこの本を読んで、近いうちにデートに誘っちゃいなさい!」
*****
5、6限の授業は全然集中できなかった。
翼くんの本命ってほんとに私なのかな。そうだったらいいなぁ。
ていうか私ってほんとに恋してるのかなぁ。だって優斗も紫苑兄様も玲央兄様も翼くんも蓮くんも碧くんも大好きだし。
翼くんへの好き、は、他の人たちへの好き、とは違うのかなぁ。
こんなことを頭の中でずっと考えていたから。
屋敷に戻った後は8時までフランス語と英語、バイオリンのレッスンをちゃんと受けて、終わったあとは夕食を食べ、お風呂に入ってから陽菜に借りた本をリビングで読み始めた。
いつもこの時間はバイオリンの練習をしているのだけれど。
今、お父様はロサンゼルス、玲央兄様はドラマの撮影で京都、珍しく紫苑兄様は帰りが遅くなるらしいから、今日だけはいいかなって。
モテ•テクよりも、人生初の恋愛小説の方に興味が湧いてしまって、巻末の小話から読んでみた。
『甘い口先』っていうタイトルで、資産家の一人娘のお嬢様が、幼い頃から一緒に育った同い年のイケメン執事に恋をして。
でも、父に政略結婚するように言われて一度は諦めて、けれど10年以上も育んできた恋を本当に諦められるわけはなくて、高校卒業と同時に2人で駆け落ちするっていうストーリーだった。
そのお嬢様は、翼くんと目が合った時の私みたいに、執事と接近するたびに心臓がバクバクしていた。
鼻血は出していなかったけれど……。
やっぱり私も恋してるのかなぁなんて、最終ページの2人のキスシーンの挿絵を赤面しながら見ていた。