財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて
 そんな私の期待は、
あっさりと裏切られた──

 佐々木は即座に首を横へ振った。

 「なりません」

 「え?」

 聞き間違いかと思った。

 「なりません、お嬢様」

 けれど、佐々木は申し訳なさそうな顔をしながらも、はっきりと言い切った。

 「私は旦那様より、お嬢様を学校から屋敷まで寄り道をさせず、安全に送り届けるよう仰せつかっております」

 その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が冷たくなる。

 まただ。

 また私は自分で決められない。

 また私の意思よりも、『西園寺家の令嬢』という肩書きの方が優先される。

 「でも、ただお友達と食事をするだけよ?」

 「それでもなりません」

 「どうして?」

 いつもならそんなことしないのに、気付けば私はそう聞き返していた。

 佐々木は困ったように眉を下げる。

 そして少しだけ声を潜めた。

 「ファミリーレストランなど、不特定多数の方々が出入りする場所でございますので」

 「それに……」

 佐々木は少し言い淀む。

 「そのような下賤な平民で溢れた場所へお嬢様が行かれたと知れば、紫苑様がどれほどご心配なさるか……」

 私は思わず黙り込んだ。
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