【新作】財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて
そしてようやく赤井の前へ辿り着く。

朱雀総長。

赤井昴。

こいつだけはまだ余裕そうな顔をしていた。

赤井は六花の肩を掴み、自分の後ろへ隠しながら笑う。

「おいおい。」

「……。」

「女か縄張り。」

赤井は挑発するように言った。

「どっちか選べ!!」

俺は答えなかった。

答える価値もない。

次の瞬間地面を蹴る。

赤井が目を見開く。

俺は一気に間合いへ入り込み、その二の腕へ手刀を叩き落とした。

「っ!!」

赤井の腕から力が抜ける。

その一瞬。

俺は六花の手首を掴んだ。

「翼くん……!」

震える声。

泣きそうな顔。

胸が痛くなる。

だが今は説明している時間がない。

ちょうどその時碧が駆け寄ってきた。

「碧!!」

俺は六花を押し出す。

「任せた!!」

「あぁ」

碧は即座に六花の肩を抱き寄せた。

「六花、大丈夫。」

そして俺は振り返る。

目の前には赤井。

怒りで顔を歪めている。

だが、遅い。

俺は全身の力を込めて。

鳩尾へ蹴りを叩き込んだ。

鈍い音が響く。

赤井の身体が宙に浮いた。

そのまま数メートル吹き飛び、地面を転がる。

俺は少しだけ目を細めた。

正直もっと苦戦すると思っていた。

黒龍と同規模の朱雀をまとめ上げてるなら、それなりの人物だろうと思っていたんだが……。

六花を人質にしたことが運のつきだったな。

周囲を見回すと、すでに勝負は決していた。

立っている朱雀メンバーはほとんどいない。

逃げ出す者。

倒れている者。

うずくまる者。

対して黒龍側はまだ戦意を失っていない。

完全勝利だった。

「「「総長!!」」」

戦いが終わると同時に。

黒龍のメンバーたちが次々に俺の周囲へ集まってくる。

勝利を喜ぶ声。

安堵する声。

興奮した声。

だが俺はそのどれも聞いていなかった。

視線の先には碧に守られながらこちらを見ている六花がいた。

怖かっただろう。

混乱しているだろう。

そして何より、俺たちの正体を知ってしまった。

黒龍総長・道明寺翼。

副総長・道明寺碧。

特攻隊長・道明寺蓮。

隠し続けてきた秘密は。

もう全部知られてしまった。

俺は六花の瞳を見る。

そして生まれて初めて、何があってもコイツにだけは嫌われたくないと思った。

【side 翼 fin 】
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