【新作】財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて

告白

ふわり、と耳元に温かい吐息がかかった気がした。

「りっか、おーきーてーーー」

毎朝私を起こしに来るメイドの声とは似ても似つかない、低くて良く通る声。



けれど、この数週間ですっかり聞き慣れた声だった。

私はうっすらと目を開く。

まだ頭がぼんやりしている。

私の記憶は昨日、蓮くんの腕の中で眠りに落ちたところで途絶えている。

だから、最初に視界へ飛び込んできた赤色を見ても、それが夢なのか現実なのか分からなかった。

「……?」

私は何度か瞬きを繰り返した。

目に映るのは、

赤い髪。

大きな瞳。

少し幼い顔立ち────



碧くんだった。

「おはよ。」

碧くんがにこにこと笑う。

私は再び瞬きをした。

「……え?」

状況が理解できない。

ここは道明寺の屋敷内の私の部屋。

私は自分のベッドで寝ていたはずだ。

なのに。

なぜ。

どうして。

碧くんがこんな近くにいるのだろう。

「……え?」

思わずもう一度言ってしまう。

すると、くすくすと笑い声が聞こえた。

そちらへ顔を向けると、翼くんと蓮くんがいた。

二人とも私の部屋のソファに優雅に座っている。

「おはよう、お姫様。」

「寝起きの顔も可愛いな。」

私は完全に固まった。

理解が追いつかない。

「……な、なんで皆いるの?」

私が尋ねると。

三人は顔を見合わせた。

そして、なぜか全員笑っている。

「昨日のこと覚えてる?」

碧くんが聞く。

私は反射的に肩を震わせた。

昨日。

夏祭り。

朱雀。

喧嘩。

そして。

黒龍。

その瞬間。

頭が一気に覚醒する。

「っ!!」

私は勢いよく身体を起こした。

だが、その反動で髪が顔にかかってしまった。

蓮くんが楽しそうに笑った。

「寝癖すげぇ。」

そう言いながら、私の頬を指でつんつんする。

「ひゃっ!?」

私は慌てて顔を逸らした。

「な、何するの!?」

「柔らかい。」

「意味分かんない!」

「もちもち。」

「やめて!」

私は慌てて蓮くんの手を払いのけた。

しかし、蓮くんは楽しそうに笑うだけだった。

なんなのこの人。

翼くんは呆れたようにため息を吐いている。

碧くんは横で面白そうに眺めている。

数秒前までの緊張感がどこかへ飛んでいきそうだった。

けれど、私は気付いてしまう。

三人とも、いつもより真剣な顔をしていることに。

そして。

昨日のことから逃げていないことに。

すると、翼が一歩前へ出る。

どこか覚悟を決めたような顔だった。

いつもに増してカッコいいなぁなんて考えてしまう。

「六花。」

低い声が部屋に響く。

蓮も。

碧も。

笑みを消している。

私は無意識に背筋を伸ばした。

翼は数秒だけ言葉を探すように黙り込む。

そして、神妙な面持ちで口を開いた。

「昨日、お前が見たものについて全部話すことにした。今から話すことは他言無用だ。父さんも知らないし、使用人で知っている者も1人もいない。」

「う、うん。秘密はちゃんと守るわ。」

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