財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて
GW最終日。



私は道明寺家の客室で荷物をまとめながら小さく息を吐いた。



本当なら。



早く西園寺家へ帰りたいと思うべきなのだろう。



優斗にも会いたい。



使用人の皆にも会いたい。



慣れ親しんだ部屋も恋しい。



けれど。



胸の奥には少しだけ寂しさがあった。



もう少しここにいたかった。



そんな風に思っている自分に気付いてしまったのだ。



コンコン。



その時。



客室の扉がノックされた。



「はい」



扉が開く。



現れたのは蓮様だった。



「荷造り終わった?」



「もう少しです」



「ふーん」



蓮様は部屋の中へ入ってくる。



そしてベッドの上に置かれたスーツケースを見る。



「帰るのか」



その言葉に。



なぜか少しだけ胸が締め付けられた。



「はい」



私が答えると。



蓮様は少しだけ視線を逸らした。



「そっか」



短い言葉だった。



けれど。



その声はどこか寂しそうに聞こえた。



その頃。



廊下では。



翼が壁にもたれながら客室の方を見ていた。



そして。



さらに少し離れた場所では碧が立ち止まっていた。



三人とも。



気付いていた。



十日前。



西園寺六花は政略結婚の候補としてやって来た。



しかし今は違う。



少なくとも。



彼女が屋敷からいなくなることを。



三人とも少しだけ残念に思っていた。

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