財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて
道明寺家を出発したリムジンが西園寺邸の門をくぐった時、私はどこかほっとした気持ちになっていたのだけれど、その安堵は玄関ホールへ足を踏み入れてから十分もしないうちにあっさりと打ち砕かれてしまった。



荷物を部屋へ運ぼうとしていた私の前へ執事の一人が現れ、まるで最初から待ち構えていたかのようなタイミングで「旦那様がお呼びです」と告げたからだ。



私は思わず足を止め、小さく息を呑んだ。



お父様。



せっかく帰ってきたというのに、またお説教だろうか。



それとも何か新しい命令だろうか。



もうどちらでもいいけれど、躾だけはやっぱり嫌。



私は荷物を使用人へ預けると、そのまま重い足取りで書斎へ向かった。



本当なら優斗に「ただいま」と言いたかったし、自室で一息つきたかったし、温かい紅茶でも飲みながら道明寺家での十日間をゆっくり振り返りたかったのだけれど、どうやらそんな時間は与えてもらえないらしい。



書斎の前へ到着すると、私は制服のスカートの皺を軽く整えてから深呼吸を一つし、扉をノックした。



「入れ。」



低く威圧感のある声が返ってくる。



私はゆっくりと扉を開いた。



相変わらず広い書斎だった。



重厚な机。



壁一面の本棚。



窓の外に広がる庭園。



そして、その中央に座るお父様。



まるでこの屋敷そのものを支配している王様みたいだった。



私は机の前で立ち止まり、頭を下げる。



「ただいま戻りました。」



けれど、お父様は私の挨拶など気にも留めなかった。



開口一番。


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