【新作】財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて
すると。

コンコン。

ノックの音が響いた。

営業本部長が入ってくる。

「社長、午後のパーティーの件ですが――」

社長は真面目な表情になる。

切り替えが異常に早いんや。

さすが社長。

「資料を。」

「こちらです。」

営業本部長が資料を差し出す。

社長は数秒で目を通す。

「問題ない。」

即断。

有能である。

本当に有能である。

だが、次の瞬間。

「そういえば。」

営業本部長が嫌な予感しかしない切り出し方をした。

「お嬢様は夏休みで道明寺家でしたよね。」

やめろ。

それ以上話題を広げるな。

僕の願いは届かなかった。

社長の目が輝いた。

「そうなんだ。」

営業本部長、やらかした。

「もう二週間近く会えていない。」

あかん。

「最近は電話だけなんだ。」

ほんまにあかん。

「それに昨日は電話をかけたのに出なかったんだ。やっぱり人間は直接合わないとダメだよなぁ。あー、早く六花に会いたい。」

駄目なんは別の部分だと思うんは僕だけやろか。

営業本部長は固まっていた。

僕も固まっていた。

秘書室の女性社員も固まっていた。

すると、社長は窓の外を見ながら呟く。

「今六花何してるのかな。」

全員が心の中で叫んだ。

知らん!!!!!!!!!

その日の昼。

社員食堂、僕は同僚たちと昼食を食べとった。

すると隣の席から聞こえてくる。

「今日何回目?」

「十五回。」

「まだ昼なのに?」

「今日はハイペースだな。」

全員が慣れきっていた。

別の社員がため息を吐く。

「お嬢様早く帰ってきてくれ……。」

すると周囲が一斉に頷いた。

「分かる。」

「社長の精神安定剤だもんな。」

「最近ちょっと情緒不安定だよね。」

「昨日なんて会議中にお嬢様の話してたぞ。」

「先週はパーティー会場でお嬢様の写真見せてた。」

「親バカじゃなくて兄バカだな。」

「いやもう病気だろ。」

全員一致だった。

その頃。

社長室では。

紫苑がスマホを見つめていた。

「今日は電話出てくれよ〜。」

切実な声だった。

そのころ、秘書室所属のの全社員が心を一つにしとった。

――お嬢様、

――お願いです。

――一回でいいので社長に会ってあげてください。

――このままだと社長より先に社員のメンタルが限界です。


【side 高橋務 fin 】
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