財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて
そして絶対零度の冷たい瞳で射抜くような視線を向けてくる。

「そういえば、先月のセリザベート王妃国際ヴァイオリンコンクールの結果が来ていたぞ。今年は銀賞だったそうじゃないか。よくも私の顔に泥を塗りおったな!!」

ドゴッ

鈍い音が聞こえると共に下腹部に衝撃を感じ、直後、鋭い痛みに襲われる。

「うぅ」

……殴られた。

「お前は何度言っても反省しない。この大事な時期に育てた恩を仇で返しおって!!」

ドゴッボコッ

「ゲホッゲホッ。ごめ、なさ……」

………育ててなんて…もらってないと思う。

もう父親というのが何なのか、私にはよくわからない。

けれど小さな頃、いつだって私のそばにいてくれたのはメイド達と優斗。風邪を引いた時に看病してくれたのも、身長が伸びたのを褒めてくれたのもメイド達。病気で亡くなったと聞かされているお母様の記憶はほとんどない。

遊び相手になってくれたのは優斗。

お父様は……数ヶ月に一回だけ屋敷に来ていた。メイド達から私の様子を聞いた後に書斎に呼び出して、お説教されて、何かを命じられて、躾けられる。これがいつもの流れ。ごくたまに頂けるお褒め言葉をどんなに待ち侘びていたか。

歳の離れたお兄様方は全寮制の学校に通っていてなかなか会えなかったし。

今までなら躾中はこんなこと考えないで、ただ無心でいるよう努力していた。その方が痛みを感じなくて済むから。

けれど、今日こんなこと考えてしまったのは、きっと雅臣さんに出会ったからだと思う。

私は今まで、父親というのはみんなお父様みたいな人だと思っていた。けれど、雅臣さんはお父様とは全然違った。

ドゴッ

「う"っ……」

お父様は私の首を掴んで、棚の方に突き飛ばして、次のコンクールで金賞とれなかったらたたじゃおかないからな。って言って書斎を出て行った。

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