【新作】財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて
【side 玲央】


大阪公演初日。

京セラドームの楽屋はライブ直前特有の慌ただしさに包まれていた。スタッフやマネージャーが忙しなく出入りする中、俺はドレッサーに座ったままヘアメイク担当に髪をセットしてもらっていた。

鏡の中にはいつもの俺が映っている。

完璧な髪型。

完璧な衣装。

我ながらよく整った顔。

国宝級イケメンに選ばれるだけあると思う。

「玲央くーん、前髪ちょっと触るねー。」

「ん。」

適当に返事をする。

すると、ふと思い出した。

「そういや。」

俺は鏡越しにメンバー達を見る。

「今頃あのブス何してんだろ。」

楽屋にいた全員が一瞬だけ固まった。

また始まった。

そんな空気が流れる。

涼介なんて既に諦めた顔をしていた。

「六花ちゃんのこと?」

「他に誰がいんだよ。」

俺は鼻で笑う。

「この前電話したらファミレスだのフードコートだの言ってやがったし。」

「普通じゃん。」

「普通じゃねぇ。俺ならもっと良い店連れてってやるのに。」

涼介は遠い目をした。

「いや別にフードコートくらい……。」

「駄目だ。」

「なんで。」

「空気が悪い。」

「意味が分からん。」

本当に意味が分からなかったらしい。

俺はため息を吐いた。

「お前ら六花見たことあるだろ。」

「ある。ってか、お前がことあるごとに写真見せて来るから見たことないメンバーなんていねぇだろ。」

「めっちゃ可愛い。」

「人形みたい。」

「天使だった。」

他のメンバーも頷く。

当然だ。

国宝級イケメンの俺の妹なんだから。

「だろ?」

俺は腕を組む。

「そんなやつがフードコートなんか行ったら周りがジロジロ見るだろ。」

「まあ見るかも。」

「だから駄目なんだよ。」

「そこなの?」

涼介がツッコむ。

そこだろ。

他にも平民がいっぱいいるからとかいろいろ理由はあるけど。

「この前なんか兄貴から連絡来てさ。」

「うん。」

「六花がショッピングモール行ったって聞いた。」

「うん。」

「でも俺その日ライブだったから何もできなかったんだ。」

「へぇ。」

「今思い出しても腹立つ。」

「なんで?」

「変な男に話しかけられてたらどうすんだよ。」

楽屋に沈黙が落ちた。

涼介が隣のメンバーを見る。

隣のメンバーがさらに別のメンバーを見る。

全員同じことを考えていた。

――お前が一番面倒な男だろ。

しかし誰も言わない。

命が惜しいからだ。

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