【新作】財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて
俺はそんな空気を気にも留めず続ける。

「しかもあいつ最近タメ口覚えたらしい。」

「へぇ。」

「最悪だろ。」

「いや良いことじゃん。」

「良くねぇ。」

俺は即座に否定する。

「六花は『玲央兄様』とか『紫苑兄様』とか言ってればいいんだよ。」

「その発想がもう怖いんだよなぁ。」

涼介がぼそりと呟く。

聞こえた。

でも無視する。

「それに今は道明寺家にいるだろ。」

「いるね。」

「三つ子いるだろ。」

「そうなんだ。」

「イケメンらしい。」

「へぇ。玲央よりカッコ良いかもよ?」

「気に食わねぇ。」

「「「なんでだよ。」」」

今度は全員がツッコんだ。

俺は真顔で答える。

「六花に近付く男は全員気に食わねぇ。」

楽屋が静まり返る。

ヘアメイクさんですら笑いを堪えている。

涼介は天井を見上げた。

「なぁ。」

「なんだ。」

「六花ちゃんってもう高一だよな。」

「そうだけど。」

「もう少し自由にしてやれよ。」

俺は鼻で笑った。

「無理。」

「即答!?」

「だって危ねぇだろ。」

「何が。」

「全部。」

「全部って何。」

「全部だ。」

涼介は頭を抱えた。

「六花ちゃん可哀想。」

「は?」

「いや可哀想だろ。」

「なんで。」

「お前と紫苑さんに挟まれて育ったんだぞ。」

周囲のメンバーも頷く。

「それな。」

「よくまともに育ったよな。」

「奇跡じゃね?」

「褒められてんのかそれ。」

俺が睨む。

全員が目を逸らした。

すると、マネージャーが楽屋へ飛び込んできた。

「五分後スタンバイお願いしまーす!」

ライブの時間だった。

俺は立ち上って衣装を整え、最後に一度鏡を確認する。

そこには完璧なアイドルがいた。

「行くぞ。」

「はいはい。」

「王子様出勤でーす。」

「うるせぇ。」

俺は笑いながら楽屋を出る。

その直前。

ふとスマホを見る。

ロック画面は六花とのツーショットだった。

「ちゃんと飯食ってんのかな。」

小さく呟く。

それを聞いた涼介は。

「うわぁ……。」

と、本気で引いた声を出していた。

だが俺は気にしない。

だって、あいつは俺の妹だからな。俺がアイツをどう思おうと、何しようと、俺の自由だろ。



楽屋に残されたメンバー達は、ステージへ向かう玲央の背中を見送りながら、ほぼ同時に同じことを考えていた。

――六花ちゃん、強く生きてくれ。

と。

【side 玲央 fin】
< 83 / 93 >

この作品をシェア

pagetop