財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて
けれど玲央兄様は何の悪気もなく、本当に当然のことのように言っている。

『却下だ』

あまりにもあっさりした判決。

『大人しく佐々木と帰って来い』

「ちょっと待っ――」

ブツッ。

無情にも通話は切れて、私はしばらく携帯を耳に当てたまま固まってしまった。

画面には無機質な通話終了の表示。

掛け直そうかとも思った。

でも無駄だということは分かっている。

玲央兄様は一度決めたら聞かないし、撮影中は携帯電話の電源を切っているはずだから、タイミングが合わないと電話に出てもらえない。

それに、そもそも最後まで話を聞いてもらえることの方が少ない。

「むぅ……」

思わず不満が漏れる。

本当に腹が立つ。

せっかく久しぶりに私から電話をかけたのに。

少しくらい話を聞いて下さっても良いと思う。

だが、怒りと同時に別の感情も胸の奥に広がっていた。

どうしてだろう。

佐々木も。

玲央兄様も。

まるで私が何も分からない子供みたいに扱う。

外進生の陽菜とファミリーレストランへ行くことの何がそんなに問題なの。

誰も説明してはくれない。

ただ冷たく駄目だと言うだけ。

無意識に校門の外を行き交う生徒たちに視線を向けてしまう。

友達同士で笑いながら駅へ向かう子たち。

カフェに行こうと寄り道の約束をしている子たち。

そんな当たり前の光景が、今の私には少しだけ遠い世界のように見えた。
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