色褪せて、着色して。Ⅷ~スノードロップ編~

「雨、やんだみたいですわ」

「あのさあ。バニラ・・・」
「雨、やんだみたいですわ」
 会話を遮るようにバニラが外を見た。
 窓には水滴がついているが、確かに雨はやんだようだ。

「マヒル様。今、お庭でガーベラが綺麗に咲いているのですが。一緒に見ませんか?」
「えっ。ああ、うん」
 バニラは笑顔で提案してきた。
 心が読めるであろうバニラのことだ。
 外で話そうってことなのだろう。

 太陽様が上で休んでいるので。
 そぉーと台所の勝手口から外に出た。
 地面は雨のせいでぬかるんでいたけど。
 バニラが歩くと、不思議なことに土が乾いていく。
 私はバニラの後ろについていくだけ。

 家の横にある庭には。
 バニラが育てたハーブや花がある。
 庭を見ていると、バニラがいかに几帳面な性格なのかが伺える。
 きちんと整頓された庭は雑草がはえていない。
「きれいな花だね」
「うふふ。ありがとうございます」
 バニラがお礼を言った。

「それで、さっきの・・・」
「マヒル様。わたくしはマヒル様に仕えております」
「へ?」
 急にどうしたとばかりに、バニラが当たり前のことを言ってのけた。
 ひらひらと花の周りを白い蝶が飛んでいく。
「マヒル様の幸せを願うと同時にご主人様である太陽様の幸せも願っております」
「うん…?」
「マヒル様が日々感じている通り、太陽様は優しすぎる心の持ち主です」
 そう言うと、バニラはゆっくりと見回るように歩き始めた。
「太陽様はいつも何か起こるたびにご自身の責任だと感じておられるようでしたので…」
「つまり、今回の駆け落ちも太陽様のせいだって勝手に思い込んでいると?」
 え、おかしくない?
 どういう思考回路で自分のせいだって思い込んでしまうのだろう。

 2階のほうを見上げた。
 なんか、しょうもなく腹が立ってくる。
 イチゴが全部悪いのに。
 イチゴだけじゃない、イチゴを甘やかしてしまったナイトも悪いに決まっている。
「暗闇に差し込む一筋の希望ですわ」
「うん?」
 バニラはしゃがみ込むと、ぶちっと葉っぱを抜き取った。
「終わりの見えない暗闇の中で、もがき苦しんでいました。それでも、光はさしてこなかった。わたくしはやっとマヒル様という希望の光と出会えました。太陽様も、そうあってほしいと願うばかりです」
 正直、バニラの言うことがわからなかった。
 ただ、バニラは理由を持って、言葉を濁しているだけはわかった。
「太陽様が笑顔でいられますよう」
 バニラの視線の先には白い花があった。
 3枚の花びらが特徴の花だ。
 はかなげに見える白い花を見つめるバニラは怒っているように見えた。
「…あのね。私も太陽様の笑顔を見たいな」
 正直に思っていた言葉を告げると、バニラはこっちを見て笑顔になった。
「まあ、マヒル様。ついに素直になられましたね」
「…いや。あのね、太陽様だけじゃなくてバニラも…みーんな笑顔になってほしいわ」
 恥ずかしくなって、ついごにょごにょと付け加えたけど。
 バニラは終始笑顔だった。

「大丈夫ですわ。大丈夫じゃなくても、わたくしがどうにかします」


つづく
< 34 / 34 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

色褪せて、着色して。Ⅸ~クレマチス編~

総文字数/25,904

ファンタジー38ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
【マヒル】 この物語の主人公。 ピアニスト。 美人だが、誰かに容姿が似ているせいで、 苦労しがち? 【ヒサメ】 マヒルのピアノの先生。 元・国家騎士。 現在はピアノを弾いたり、作曲をしている。 訳あって顔を隠している。 【バニラ】 マヒルの侍女。 実は妖精で、とんでもなく強い。 【太陽】 マヒルの夫。 国家騎士で国王の側近。
名探偵は活躍しない

総文字数/47,833

その他77ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
【逢坂まりあ】 主人公。高校2年生。 逢坂財閥の娘。 超お金持ちのお嬢様。 並ならぬ記憶力の持ち主。 父の言うことは絶対だと思い込んでいる。 【逢坂次郎太】 まりあの養父。 現当主の弟。 美しいものが大好き。 【逢坂桜子】 まりあのいとこ。高校2年生。 逢坂財閥、当主の娘。 超お金持ちのお嬢様。 自由奔放で、 まりあに言わせると。 余計な一言が多い。
色褪せて、着色して。Ⅶ~カンパニュラ編~

総文字数/31,542

ファンタジー51ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
【マヒル】 この物語の主人公。 スカジオン王国出身。 金髪碧眼で絶世の美女。 王家近くの領地で暮らしている。 ピアニスト。 【太陽】 マヒルの夫。 国家騎士で国王の右腕。 仕事が多忙のため、 ほとんどマヒルの前に姿を 現さなかった…が…? 【バニラ】 マヒルの侍女。 桃色の髪に真っ赤な眼をしている。 実は妖精で、何でも出来る。 【トペニ】 マヒルの護衛。 チャラくてイケメン。 【スズメ】 マヒルの護衛。 堅物で非常に真面目。 【ジョイ】 国家騎士。出世して、 あまりマヒルの前に現れなかった。 いつも陽キャ全開。 【マリア】 国家騎士。出世して、 あまりマヒルの前に現れなかった。 ジョイとは違って、落ち着いている。 【オーロラ姫】 ???

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop