あたし恋をしてるかも【恋愛短編集】



文化祭も終わりに近づく2日目の夕方、赤星先輩のバンドが野外広場でライブを行う。


私はウキウキしながら、最前列を陣取った。


早くあの音を響かせて。

キラキラ輝く世界に連れて行って。


「こんにちは!音楽研究部でーす!」


いつも通り、挨拶をしながら登場する赤星先輩とバンドのメンバー。


普段ならすぐに曲が始まるのに、今日は違う。

先輩の表情が、心なしか暗い。



「えーと、ライブの前にお知らせがあります。」


その瞬間、胸騒ぎがした。

何かはわからないが、とても嫌な予感がしたのだ。



「3年ほどバンドを続けてきた僕たちですが、今日が最後のライブになります。僕、ベースの赤星が東京の大学へ進学するため、解散することになりました。」



私は言葉を失い、最前列で立ち尽くす。


先輩が東京に行ってしまう。

春になったら、もう、会えなくなる。



嘘。

嘘だ。


ねぇ、赤星先輩…。




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