金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
ーーショパンは横顔が美しかった。ピアニストがピアノを演奏する時、観客席から見えるのは、ピアニストの横顔なんだ。僕も横顔には自信がある

以前、詩月が自慢げに話していたのを思い出し、改めて詩月の横顔を観る。

詩月の横顔は確かに、自慢するだけあって美しい。

だが、その美しさが曲の調べにマッチしすぎて思え、ビアンカの涙腺が緩んだ。

涙は止まらなかった。

ピアノを演奏する詩月の姿が涙で滲む。

カウンターの中で、マスターも詩月のショパンに聴き入っている。

店の客たちも、詩月の様子が違うのを感じているのか、いつもほど騒がしくはない。

誰かが「今日はなんだか、湿っぽいな」とポツリ言った。

それに、食いつき反論する客はいない。

詩月が郁子の母親から辛辣な電話を受けたことを、店の客たちも噂を聞いて知っているからだろう。

たがーー。
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