金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
episode7ーー

chapter1ーー愛は花

詩月は長年、手入れをされず倉庫同然の部屋に押し込まれたピアノを前にして、息を飲んだ。

「かわいそうに」

思わず口をついて出た。

「直せますか」

修理依頼の連絡を入れた男性だろうか、心配顔で、詩月の顔色を窺いながら訊ねる。

「とりあえず、診てみないことには何とも」

詩月よりも先に、先輩調律師が答えた。

それほど、ピアノの見た目は荒んで見えた。

詩月がピアノの埃を丁寧にはらうと、ようやく黒いポディが露わになった。

詩月はこんな状態まで、放っておいたのには余程の事情があったのだろうと思ったが、安易には聞けない。

ピアノのルーフを上げようとすると、軋んだ音がした。

先輩調律師と2人がかりでゆっくりと開ける。

ピアノの内部はパッと見、どうにか深刻な傷などはないように見えた。

が、先輩調律師は再び苦い顔をした。

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