金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
ーーブラームス『雨の歌』

「全く、解釈の難しい曲を」

ーーあなたが昨年、炎天下のベランダで弾いているのを聴いて、どうしても演奏したくなったの

「君は思い立ったら突っ走るタイプなのか。で? 僕に何を」

詩月はなかなか本題を言わない小百合に、素っ気ない風を装い、訊ねた。

ーーわたしが優勝してウィーンに行ったら、一緒にチャイコフスキーの『懐かしい土地の思い出』を演奏してほしいの。それから、あなたのピアノ伴奏で『雨の歌』を演奏したいの

「勿体ぶって何が望みかと思えば、わかった」

ーーありがとう。モチベーションを保てそう。大丈夫、絶対に勝てるわ

詩月は単純だなと思ったが「頑張れよ」と励ました。

BALでは詩月にかかってきたけたたましい電話の主が誰なのか、電話が終わった後、詩月は質問攻めになった。

「元ヴァイオリンの師匠の孫だ」

詩月は静かに答えた。
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