金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
「8時前だ」

「ーーアラーム……ごめん」

詩月はため息混じり、ポツリと言った。

「講義はあるのか?」

「今日はない。真っ直ぐ工房に」

「仕度しろ。送ってやる」

ユリウスは詩月が朝食を取り、仕度をしている間に、ダイニングとキッチンを片付けた。

工房に向かう道すがら、マルグリットの心配を伝える。

「大丈夫なのか」

「まあ。用心はしているし、セーブもしている。理仁さんともマメに連絡をとっている」

「我慢しなくていいんだぞ」

「社長も先輩たちも、体のことを知っているみたいだし、教授やミヒャエルそれにビアンカも気遣いしてもらっている」

ユリウスには詩月が無理をしているのは解っているのに、詩月は首を縦には振らない。

何故、認めないのか、正直に言えと言いたくなる。

詩月は言い方を変えても、「用心はしている」「気がけている」と交わすに違いないと思った。
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