金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
何年か前までは、1日練習しないと自分が判る、2日練習しないと判る人には判る、3日練習しないと誰にでも判るなどと言われた。

だが、実際のところ暫くヴァイオリンから離れても、演奏できなくなるわけではない。

何年も練習した積み重ねの経験値で、指が覚えている。

ユリウスの言った通り、エィリッヒも目新しいことは特に何も話さなかった。

忙しくて練習時間が取れない時にこそ、基本的な練習をする、左右ゆっくりと気になる部分を徹底して弾くこと。

またメトロノームを使ってテンポを掴むこと……など。

「焦ったぶん、かえって感覚は鈍くなるし、悪循環だ」と言った。

詩月は腱鞘炎と診断され練習時間の制限をされた時、今よりずっと練習内容が充実していたことを思い返した。

ーーああ、そうだった

腱鞘炎の痛みに耐えながら、制限された練習時間の枠内ででも、満足できる練習内容だったと。
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