金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
詩月は黒のジャケット、パンツで来てよかったと思った。

最前列のピアノ側に座り、コートを畳み、ヴァイオリンケースと共に、膝上に置いた。

ーー小百合、讃美歌の演奏を頼まれた。最前列、ピアノ側に座っている

詩月は小百合にメールを送ると、自分は捲き込まれ体質なのかと思い、フッと笑いがこみ上げた。

小百合が詩月の隣に座ったのは、礼拝開始10分前だった。

「何故、あなたが讃美歌演奏を?」

小百合は開口1番、訊ねた。

「ピアノ奏者がウィルス感染したそうだ」

「無用心ね」

「そうだな」

「初見で演奏するの?」

「まあ、そうなる。難しい曲ではないし。昨日、調律したピアノだ」

「スゴいタイミングね」

「まあな」

詩月は答えてスクッ席を立った。

コートとヴァイオリンケースをそっと、席に置き、楽譜を持ってピアノに向かった。

厳かに前奏ヨハネの黙示録 を弾く。
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