金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
礼拝は約1時間ほどで終了した。

「ママ。ピアノの人、天使さま?」

幼い女の子が母親に手を引かれたまま、コートを着用する詩月をじっと見つめていた。

「えっ!? 違うわよ」

詩月はフッと笑いながら、女の子に手を振った。

「ちょっと、変な期待持たせちゃダメよ」

「かわいい誤解だと思ってね」

「本気にしちゃうでしょ」

「まさか……」

小百合と話していると、司祭が補佐と詩月に駆け寄り、深々と1礼した。

「ありがとうございました、助かりました」

「こちらこそ。大事な日に演奏させて頂けてありがとうございました」

詩月の隣で小百合が、詩月の手を握りしめていた。

「早く」と言いたいのを我慢しているのが、ありありと解る。

詩月は、解りやすい性格をしているなと思う。

会場を出る人の波に出遅れないよう、会釈して寺院を出ると、広場で寛ぐ人々で賑やかだった。
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