金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
「小百合、お腹空いてない? 消毒したら何か食べようよ。詩月も」

BALに着くと、マスターが1人忙しくしていた。

「やあ、来たか」

「マスター、薬箱を借りるよ」

「ん?……どうかしたのか」

「ちょっと弦で……」

詩月とマスターが話していると、ビアンカがバックヤードから薬箱を持ってきた。

「詩月」

「ありがとう。小百合、座って指を」

小百合は頬を紅くしたまま、所在無さげに座り、そっと手をテーブルの上に置いた。

詩月は綿棒を消毒液出浸し、小百合の指と爪の間に塗った。

手慣れた手つきで、処置をしていく。

流れるように手際がよいが、事務的とは違う。

丁寧で労るように優しい。

「しみないか?」

「大丈夫」

薬を塗ったガーゼの上に油紙を乗せ、指に被せテープで固定し、包帯をズレないように巻いた。

「ありがとう」
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