金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
街頭演奏は振り向かせる、聴衆、観客に向けて奏でる聴かせるステージだ。

詩月の言葉が1つ1つ思い出され、「あーそうだ」と小百合は心の中で頷いていた。

ーーお願い、安坂さん

小百合が思った時、チラと見慣れた顔を見つけた。

前列から数えて2列目、左端から5人目に小百合をじっと見つめる安坂が居た。

「『雨の歌』とはまた、ずいぶん思い切った選曲だな」

安坂は仏頂面で声をかけた。

「その演奏、僅かだが周桜に似ている」

安坂はそう云うと、ヴァイオリンを取り出し急ぎ調弦を済ませ、小百合の演奏に合わせて演奏し始めた。

ーーえっ!! 何

安坂は小百合が一瞬、驚き安坂の顔を見つめるとフッと笑った。

目を閉じて、詩月との演奏を思い浮かべた。

あれから、もう2年を過ぎたのかと思った。

懐かしさでグッと胸が熱くなり、つい今演奏しているのが詩月ではなく、小百合だと忘れてしまっていた。
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